和解学の創成

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高麗大学東アジア和解協力センターと共に、早稲田大学国際和解学研究所が 「日韓間の過去の歴史に起因する問題を包括的に解決するための共同提案」を両政府と市民社会に向けて行いました

早稲田大学国際和解学研究所は、新領域プロジェクトを支える早稲田大学内のプロジェクト研究所です。高麗大学の東アジア和解協力センターとは、箇所間協定(MOU)によって結ばれています。近年の悪化する日韓関係を前にして、両研究所は危機感を共有しつつ、互いの所長間で、以下の共同声明をまとめました。

ぜひ、この趣旨にご賛同いただき、今後、多くの方から賛同・署名をいただきますれば幸いです。恐縮ですが、トップページ下の緑色の部分にある「国際和解学研究所へ募金・連絡する」をクリックしてご署名とメッセージをお寄せいただきたく、よろしくお願い申し上げます(募金のページで恐縮です。署名を募る機能が十分にないためにここからとなりましたことご理解をお願い申し上げます)。(写真は2019年3月に、高麗大学で行われた早稲田大学との合同会議の場面です)

1.共同提案の必要性

高麗大学東アジア和解協力センターと早稲田大学国際和解学研究所は歴史問題をめぐり日韓間の葛藤が増加し、両国間の国民感情が悪化している現在の状況の深刻さを直視しつつ、このような状態が持続するのは、歴史問題の当事者と両国の未来のために決して望ましくないという共通の認識を持つに至った。日韓歴史問題は、1965年の韓日条約の締結時、日本の植民地時代に起こった事件や戦争動員の「清算」が曖昧に処理され、その後、韓国の民主化の過程で被害者が声を上げることで浮上した。私たちは、現在の状況を克服し、両国の共同繁栄と和解を実現するために、3つの原則に基づく共同提案を作成した。これにより、高麗大学東アジア和解協力センターと早稲田大学国際和解学研究所は一緒に力を合わせ、現在の日韓関係における困難な状況を克服するための出口に向けて、アカデミズムの社会的責任を遂行しようとするものである。

2.問題を解決するための3つの原則

①両国国民の共同繁栄の原則

②人権被害者の共同救済の原則

③未来に向けた相互理解と節制の原則

 

3.共同提案の内容

①日韓双方は、戦時韓国人労務動員被害者(韓国側の正式表現は「強制動員被害者」、以下戦時労務動員被害者と表記する)の人権尊重を原則とし、必要な解決策を模索するため、問題が内政と外交双方にまたがる問題であるとの了解のもとに、内閣と大統領にそれぞれ直属する「日韓共同委員会」を設置する。 (※詳細については、4)

②日韓双方は、日韓共同委員会の設置により、韓国内の日本企業の資産売却手続きと日本の韓国に対する経済的制限措置を中止する。また、現在停止されている経済、文化、市民社会の交流を可能な限り早く再開させ、過剰なナショナリズムを抑制するために努力する。

③日韓双方は、人権被害者の迅速な救済のために、どこまでも暫定的な措置として、日韓企業と市民から募金された共同基金を創設し、韓国大法院裁判判決を受けた戦時労務動員被害者に対する「補償」を実施する。 (※詳細については、5)

 

4.「日韓共同委員会」について

①日韓共同委員会は、両国政府が中心となって、各々内閣府直属と大統領府直属による独立性を持つ委員会として設置して、問題解決のため、両国の国民の共同提案を調整して整理する機能を実行する。

②委員会は、政府関係者、法律専門家、学者だけでなく、市民運動家と人権被害者側の代表者、企業側の代表などで構成されていることが望ましい。

③委員会は、様々な分野での交流をしている両国の市民から幅広い提案を受け、オープンで民主的な審議をすることにより、市民的合意を拡大していく。また、専門家を中心に資料を調査し、議論の土台となる事実の発見と論点の整理を行う。

④同委員会は、「2」で示された3つの原則に基づく審議を通じて、韓国人戦時労務動員被害者問題のような、個々の歴史問題への解決策を提示するにとどまらず、今後、日韓両国間でいかなる歴史問題が浮上した際にも和解が維持されていくための制度的装置を包括的に議論する。

⑤委員会における審議とその運営は、以下の基本精神と認識を共有することによって行われる。第一に、歴史問題は相手の内政や国民感情に触れる問題であることを十分に理解しつつも互いの感情的な対応を抑えること、第二に、両国国民の共同繁栄と人権被害者の共同救済という地域的公共性のために審議を行うこと、第三に、未来志向的な国境を越えた市民活動を促進する市民的公共性を意識すること。これらの精神の共有により、委員会の活動は、新しい時代に向かう東アジアの歴史を背景とした共通規範とモデル構築に寄与するだろう。

⑥委員会の活動期間は3年とするが、委員会が用意した最終的な結論が、両国の多数の国民から支持されるものとなるように、委員会は各々の国民に向けた広報と説得活動も行う。最終的な結論は双方の多数の国民から支持され、国会で批准されることが望ましい

 

5.暫定的な「補償」について

①韓国人戦時労務動員被害者に行われる「補償」のための資金は、当該労務動員被害者が従事していた日本企業や、日韓条約の恩恵を受けた韓国企業に積極的に参加を呼びかける。また、日韓両国の市民からの募金も受ける。

②この措置は、日韓共同委員会が結論を下した後に、日韓両国の国会批准を通じた新たな合意が行われるまでの、あくまでも暫定措置とする。

③韓国人戦時労務動員被害者と日本企業の間で「和解」が成立した場合、日韓両国はこれを歓迎する。この暫定基金は、日韓和解のための基金に発展的に解消されることが望ましい。

[付記]高麗大学東アジア和解協力センター、および、早稲田大学国際和解学研究所は、共同提案を発表すると同時に、この共同提案に参加する個人、団体、機関の署名を受けて、この共同提案が実行できるように努力する。

2019年7月31日

高麗大学東アジア和解協力センター・所長 朴鴻圭 、 早稲田大学国際和解学研究所・所長 浅野豊美